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自責と子どもの人権

執筆者の写真: 裕子 小野寺裕子 小野寺

子どもの頃のトラウマ体験や愛着の問題を抱えている人には、「自分が悪い」「自分には価値がない」と考えてしまう人がいます。

このように自分自身に対し否定的な信念をもってしまうのもトラウマの症状のひとつで、「否定的な自己概念」と言われています。


子どもの頃に起こった出来事により「自分が悪い」との考えを学習してしまうのですが、本当に自分が悪かったのでしょうか。

「殴られたのは自分が悪い子だから」「大切にされないのは自分に価値がないから」本当にそうでしょうか。


人間の子どもは生まれてすぐに自立はできません。子どものうちは誰かに守ってもらう必要があります。成長する過程で保護や配慮が必要であり、それらは子どもの権利として定められています。国際連合総会で「子どもの権利条約」が成立しており、日本でも1994年にこの条約に入りました。権利条約の54条の条文のなかからいくつか紹介します。



第12条「意見を表す権利」子供には自分に関係のあることについて自由に自分の意見を表す権利をもっています。その意見は十分考慮されなければなりません。


第19条「あらゆる暴力からの保護」どんなかたちであれ子どもが暴力を振るわれたり不当な扱いなどを受けたりすることがないように国は子どもたちを守らなければなりません。


第27条「生活水準の確保」子どもは心やからだが健やかに成長できるような生活を送る権利をもっています。


第31条「休み、遊ぶ権利」子どもは休んだり遊んだり文化芸術活動に参加したりする権利をもっています。


第34条「性的搾取からの保護」国は子どもが児童ポルノや児童買春などに利用されたり、性的な虐待を受けたりすることがないように守らなければなりません。


第36条「あらゆる搾取からの保護」国はどんなかたちでも子どもの幸せをうばって利益を得るようなことから子どもを守らなければなりません。


第39条「被害にあった子どもの回復と社会復帰」虐待、人間的でない扱い、戦争などの被害にあった子どもは、心やからだの傷をなおし、社会にもどれるように支援を受けることができます。


公益財団法人 日本ユニセフ協会 子どもの権利条約




誰にでも人権があり子どもにも権利があります。でもその権利は守られてきたでしょうか。


もし自分を養育する立場にある大人が権利を守らなかったら子どもはどうなるのでしょう。権利を守らない大人を正すことは無力な子どもにはできません。絶望のなか子どもが唯一できることは「自分が悪い」と思うことです。


「自分が悪いから殴られるんだ、自分に価値がないから大切にされないんだ」。そう思うことで自分がいい子になれば現状を変えることができるのだと、わずかでもコントロール感がもてるのです。「自分が悪い」と思うことが一縷の望みになるのです。



子どもの頃にもった自分自身に対する否定的な信念は、大人になってもその人の人生に影響します。ちょっとしたことでも「自分が悪い」「自分には価値がない」との思いが湧き出てきてしまい、人間関係がうまくいかなくなったり、能力を十分に発揮できなくなったりすることがあります。


そのような時には自分の権利は十分に守られてきたのか、子どもの自分に問いかけてみましょう。周囲の大人が子どもの権利をないがしろにしていたとしたら、悪いのは子どもでしょうか大人でしょうか。



もしも電車であなたの隣に座った幼い子が、「殴られたのは自分が悪い子だから」「大切にされないのは自分に価値がないから」と言っていたら、あなたは何と言ってあげますか。



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