神経発達症(特にADHD)の大学生からの相談で多いのが「課題の提出について」です。
提出ができない理由の一つに、履修科目が多く課題がいろいろ出ていると「やったかまだかわからなくなる」ようです。 わからなくなると、「やった」の認知に傾く人と「まだ」の認知に傾く人といるようです。
「やった」の認知では「たぶんやった、やったことにしよう、大丈夫」となります。そしてなんとなく忘れてしまうのですが、後で発覚し取返しがつかない状況になってしまっていたり、周囲から怒られたりするので自己効力感や自尊心が低下してしまいます。
「まだ」の認知では「やったかな、まだのような気がする、どうしよう」となります。不安感が高まるため何度も確認を行います。落ち着かず周囲の人に何度も確認をするため疎まれることがあります。不安感や強迫観念が高まってしまいます。
課題提出を忘れないよう「すぐやる」ことで対処している人もいます。この場合提出もでき不安感もなくなるのでよいのですが、課題の量が多くなるとパンクしてしまいます。
根本にあるのが実行機能の障害といわれるものです。情報を整理し順序だてて行うことが苦手というか、かなりの努力を要するのです。周囲の人に理解してもらいたいのが、スマホのアプリをつかって管理するとか、すぐメモをとるとか、努力して頑張っても追いつかないことがあるのです。もちろん上手に対処しているADHDの方も多いです。でも実際に実行機能がどうしてもうまく働かない人がいます。
実行機能の障害があるからといって能力が低いわけではありません。誰かが情報を整理し段取りを組んでくれれば成績がぐっと上がることもあります。
努力し自分の苦手を克服するのが美徳とされるところもあります。ただ、自尊心が低下することや不安で体調を崩すのであれば、もっと早い段階で苦手なことを誰かに“外部委託”してもいいのではないでしょうか。
家族や友人、パートナー、支援者など外部委託先を見つけ、科目ごとに課題の難易度や分量、提出の頻度、いつまでにどのような形で提出するのか整理してもらいます。外部委託先は課題提出までの段取りをシステム化し、提出の有無をチェック、視覚化していきます。
外部委託先の方はちょっと負担が大きいかもしれません。大学の相談室や支援室、就労移行事業所などを利用してみるといいかもしれません。
当相談室でも大学生の方のご相談をお受けしております。困ったことになり自分を責めてしまう前に早めにご相談ください。
Comments