逆境的小児期体験(Adverse Childhood Experience : ACE)とは,小児期における被虐待や機能不全家族との生活による困難な体験のことです。
元々は肥満治療の研究において減量を成功できない患者のうち、少なくない数の人たちに子ども時代のトラウマがあることがわかったことから、ACEスコアと健康状態の関係についての調査が始まりました。
ACEスコアには以下の7つの項目があります。
① 心理的虐待
② 身体的虐待
③ 性的虐待
④ 家族のアルコールや薬物依存など
⑤ 精神疾患をもつ家族
⑥ DVの目撃
⑦ 家族の収監
他にも逆境的小児期体験には、ネグレクトや家族の離別などもあるといわれています。
ACEスコアが高いと成人期以降の心身の健康に影響することがわかってきています。 肥満の他、身体的な健康への影響では癌や脳卒中などのリスク、心理的な健康ではうつや自殺企図などが、ACEスコア0の人と4以上の人では数倍のリスクがあるといった研究結果もあります。
子ども時代の逆境的体験は、歳月の経過によって自然に癒されることがなく、大人になっても心身の健康に影響することがあります。
理由のよくわからない不安感や気分の落ち込み、体のだるさや動悸などは子どもの頃の体験が影響しているかもしれません。
子ども時代の辛い思い出や、蓋をしてきた記憶に向き合うことは勇気のいることです。でも諦めずに心身の健康を取り戻そうと子ども時代の苦しい記憶に向き合っている人もいます。
トラウマから解放されるため、過去の出来事で苦しまなくてすむように、研究者や治療者はトラウマに苦しんでいる人と共に、さらなる努力をしていかなければなりません。
【参考文献】
逆境的小児期体験が子どものこころの健康に及ぼす影響に関する研究(2019) 研究分担者 山崎 知克 (浜松市子どものこころの診療所) 研究協力者 野村 師三 (浜松市子どものこころの診療所)
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