ADHD?それともトラウマ?
- 裕子 小野寺
- 10月28日
- 読了時間: 3分
― 子どもの「落ち着きのなさ」に隠れている心のサイン ―
「もしかしてADHDかも?」と思ったときに
お子さんが「集中できない」「落ち着かない」「すぐ気が散る」といった様子を見せると、
まず思い浮かぶのが ADHD(注意欠如・多動症) かもしれません。
でも実は、トラウマ(心の傷)によるストレス反応でも、
とても似た行動が見られることがあります。
多くの研究者が、トラウマによる症状はADHDと間違われやすいと指摘しています。
両方に共通して見られるサインには、
集中が続かない
気が散りやすい
聞いていないように見える
多動や落ち着きのなさ
寝つきが悪い
などがあります。
トラウマとADHDの「見た目の似ている行動」
たとえばトラウマを経験した子どもは、
不安や怖さから常に体が「緊張モード」「警戒モード」になっていることがあります。
その結果、周囲から見ると「そわそわしている」「多動っぽい」と見えることがあります。
また、トラウマの記憶を思い出すような場面を避けようとして、
ぼーっとしたり、現実感がなくなる(解離)こともあります。
この状態は一見、「不注意」「上の空」に見えるかもしれません。
さらに、トラウマに関連する考えや映像がふいに頭に浮かび、
混乱したり、衝動的な行動をとってしまうこともあります。
これもADHDの「衝動性」とよく似ています。
ADHDとトラウマ、どちらか一方とは限らない
トラウマは子どもの記憶・注意力・感情・行動・人間関係など、幅広い面に影響します。
もともとADHDの特性をもつお子さんがトラウマを経験すると、
その症状がより強く出ることもあります。
逆に、ADHDがあることで、トラウマの影響がより複雑に絡み合うこともあります。
「ADHDか、トラウマか」とどちらか一方を決めるのではなく、
両方の可能性を視野に入れて関わることが大切です。
行動の奥にある「心の声」を聴く
落ち着かない、話を聞けない、すぐイライラする——
そうした行動の裏には、
「怖かった」「つらかった」「どうしていいかわからない」といった
心の叫びや不安が隠れていることがあります。
子どもの行動を「困った」と捉える前に、
「この子は何を感じているんだろう?」
「どんな経験があったんだろう?」と立ち止まってみることが、
心を支える第一歩になります。
子どものペースで、安心を取り戻す
お子さんが“困った行動”をしているとき、
それは“困らせようとしている”のではなく、
助けを求めるサインかもしれません。
安心できる環境で、気持ちを聴いてもらう時間を重ねていくと、
少しずつ落ち着きを取り戻していく子どもたちはたくさんいます。
焦らず、比べず、お子さんのペースで。
親御さん自身も、頑張りすぎないでくださいね。
✍まとめ
トラウマによる症状はADHDとよく似ている
行動の背景には「怖さ」や「不安」が隠れていることも
ADHDとトラウマはどちらか一方とは限らない
大切なのは「この子の心に何が起きているのか」を丁寧に見ること
ハピネス発達心理相談室🌸
【参考文献】
兵庫県こころのケアセンター「ADHD?それとも子どものトラウマティックストレス?臨床家のためのガイド」
https://www.j-hits.org/_files/00127486/4_1_adhd.pdf (2025/10/28参照)





