子どもの頃のADHDは大人になるとどう変わる?研究が示す“多様な未来
- 裕子 小野寺
- 11月9日
- 読了時間: 4分

「ADHDは子どもだけのもの?」「大人になったらどうなるんだろう?」そう思ったこと、ありませんか?今回は、ADHD(注意欠如・多動症)の特性が、子どもから大人になるにつれてどんなふうに変化していくのかを、最新の研究をもとに分かりやすく紹介します。大切なのは、「ADHDの未来はひとつじゃない」ということ。症状が軽くなる人、続く人、そして現れ方が変わる人――まさに十人十色の道すじがあります。
1. ADHDの経過は人それぞれ研究が明らかにした「7つのタイプ」
最近の長期追跡研究では、ADHDのある子どもが大人になるまでの経過を分析したところ、7つのパターンに分けられることが分かりました。
重い症状がずっと続くタイプ
重い症状がだんだん軽くなるタイプ
不注意がずっと続くタイプ
中程度の症状がだんだん重くなるタイプ
中程度の症状がだんだん軽くなるタイプ
軽い症状がずっと続くタイプ
ほとんど症状がないタイプ
つまり、ADHDは「良くなる」「治る」といった単純な話ではなく、人によってまったく異なる軌道をたどるということです。
2. 症状が軽くなるケース(寛解)
2.1 どれくらいの人が寛解するのか?ある33年間にわたる追跡研究では、子どもの頃にADHDだった人のうち、41歳の時点で診断が続いていたのは全体の22%。裏を返せば、約8割の人で症状が診断基準を下回るまで改善していました。つまり、ADHDの特性は「一生変わらないもの」ではなく、成長とともに変化する可能性があるんです。2.2 寛解=困難の解消ではないただし、「診断がつかなくなった=困りごとが消える」というわけではありません。追跡調査では、寛解した人たちの中にも、・集中の持続が難しい・段取りや時間管理に工夫がいるといった特徴が残ることが報告されています。寛解と持続は地続きの関係。症状が軽くなっても、自分に合った対処方法を見つけていくことが大切です。
3. 症状が続くケース(持続)
3.1 現れ方は変わっていくADHDの症状が続く場合でも、子どもの頃とは違う形で現れることがあります。たとえば、
小さい頃に目立っていた多動が「頭の中のそわそわ感」になる
不注意が仕事の段取りミスとして目立つようになる
といった具合です。つまり、症状が変わらず続くのではなく、質的に変化するんです。3.2 症状が続きやすい要因研究では、次のような特徴を持つ人ほど成人期まで症状が持続しやすい傾向があると報告されています。
子どもの頃の症状が重い
うつ病や不安障害などを併存している
支援が必要な困難を多く抱えていた
これらは「治療のせいで続いた」という意味ではなく、もともと支援が必要なケースが長期的に続きやすいということです。
4. よくある疑問Q&A
Q1. 大人になってからADHDになることはあるの?
最近「大人になってからADHDになった気がする」と感じる人もいますね。けれど研究によると、多くの場合は不安障害やうつ病などの影響でADHDに似た状態が出ているケースが多いようです。「突然発症するADHD」は非常にまれで、正確には「ADHDに似た症状を後から示す」状態と言えます。だからこそ、専門家の丁寧な評価が大切なんです。
Q2. 脳や認知機能も変化するの?
はい、変化します。長期研究によると、ADHDのある人もない人も年齢とともに認知機能が発達します。ただし、両者の差は完全にはなくならず、「平行線をたどるように伸びていく」と言われています。一方で、記憶や空間認知などの一部の領域では、差が縮まるケースも見られます。つまり、発達は続くけど、得意・不得意の傾向が残るというイメージです。
結論:多様な未来を理解し、自分に合ったサポートを見つけよう
この記事で見てきたように、ADHDの経過は本当に多様です。最後に、覚えておいてほしい3つのポイントをまとめます
ADHDの経過は一人ひとり違う 症状が軽くなる人、続く人、形を変える人――どの道も自然な流れです。
診断が消えても、特性は人生の一部として残ることがある 「寛解した=終わり」ではなく、次のステージが始まると考えると少し気が楽になります。
変化を理解することが支援の第一歩 自分の特性の変化を知ることは、より自分らしい生き方を選ぶための大事な羅針盤になります。
ADHDの経過を「治る・治らない」ではなく、「変化していくもの」として理解すること。それが、自分を責めずに、自分に合った生き方を見つけていくための第一歩です。あなたの歩む道は、誰とも違うあなただけのもの。その道をどう進むかは、あなたの手の中にあります。
ハピネス発達心理相談室
参考文献
Klein RG et al. Clinical and Functional Outcome of Childhood ADHD 33 Years Later. Arch Gen Psychiatry. 2012.
Shaw P et al. Developmental changes of neuropsychological functioning in ADHD. Biol Psychiatry. 2015.



