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- 嫌なことは寝て忘れる?レム睡眠と記憶の整理
ゆったりと寝ている猫 「嫌なことがあったけれど、ひと晩寝たら少し気持ちが楽になった」 そんな経験はありませんか? 私たちの脳は、眠っているあいだも、その日にあった出来事や感情を整理しています。 その中でも、感情を伴う記憶の整理に関わっていると考えられているのが、レム睡眠です。 今回は、レム睡眠と記憶の整理について、少しご紹介します。 レム睡眠って? 睡眠には、大きく分けて「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」があります。 レム睡眠の「REM」は、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)の頭文字です。 その名前のとおり、眠っているあいだに眼球がすばやく動くことがあります。 身体は力が抜けて休んでいる一方で、脳は比較的活発に活動しているのがレム睡眠の特徴です。 夢を見やすいのも、レム睡眠のときです。 睡眠中に記憶は整理されている 私たちの脳は、起きているあいだに経験したことを、そのまま全部保存しているわけではありません。 眠っているあいだに、必要な記憶を整理したり、定着させたりしています。 特にレム睡眠は、感情を伴った記憶の処理に関わっていると考えられています。 たとえば、強くうれしかったことや、怖かったこと、嫌だったこと。 こうした感情の動きが大きかった出来事は、私たちの記憶にも残りやすいものです。 レム睡眠では、こうした「感情を伴う記憶」が優先的に処理されると考えられています。 「出来事」は覚えていても、「つらさ」は少しずつ変わる 睡眠と感情の研究では、 出来事そのものの記憶は残しながら、そこに結びついている感情の強さを調整していく という働きが注目されています。 つまり、 「何があったか」は覚えていても、「そのときの感情」は少しずつ変化していく。 そんな記憶の整理が、眠っているあいだに行われているのかもしれません。 眠れないと、感情の調整にも影響する では、レム睡眠が十分にとれなかったらどうなるのでしょうか。 研究では、レム睡眠が不足したり、途中で何度も目が覚めて睡眠が分断されたりすると、翌日に不快な記憶や刺激に対する反応が強くなることが示されています。 「嫌なことがあったから眠れない」 そして、 「眠れないから、翌日も嫌なことを引きずってしまう」 ということもあります。 睡眠と感情は、お互いに影響し合っているんですね。 「嫌なことは寝て忘れる」は、あながち間違いではない もちろん、眠れば嫌な記憶が消えてなくなる、というわけではありません。 でも、眠っているあいだにも脳は働いていて、経験した出来事や、それに伴う感情を整理しています。 だからこそ、つらいことがあったときには、 「早く気持ちを切り替えなきゃ」 と頑張りすぎるより、 まずはしっかり休むこと。 それだけでも、脳が記憶や感情を整理する時間をつくることにつながります。 「嫌なことは寝て忘れる」 昔からあるこの言葉。 科学的に見ても、少し納得できるところがあるのかもしれません。 今夜は、あれこれ考えすぎずに、ゆっくり眠ってみませんか? ハピネス発達心理相談室 hapi-soudan.com 【参考文献】 阿部 高志「覚醒時の情動処理におけるレム睡眠の役割」 生理心理学と精神生理学 39(1) 19‒35, 2021
- トラウマになるまえに「早くケアする」という選択肢もあります 〜R-TEP・G-TEPとは?〜
こころのケア 事故や災害、突然の出来事、大切な人との別れなど、強いショックを受ける出来事を経験した直後は、心も脳も大きな負担を受けています。 この時期に行う心理的ケアの一つが、R-TEP(Recent Traumatic Episode Protocol)です。 R-TEPは、出来事の直後から数週間程度の時期に行うEMDRのプロトコルで、つらい記憶がトラウマとして固定化する前に整理し、心への影響を和らげることを目的としています。 イメージとしては、「深い傷あとになってしまう前に、傷を適切に手当てする」ようなケアです。 もちろん、ショックを受けたすべての人が心理療法を受ける必要があるわけではありません。多くの方は休息や周囲の支えによって自然に回復していきます。 一方で、 「頭から離れない」「眠れない」「何度も思い出してしまう」 といった状態が続く場合には、早めの専門的なケアが役立つことがあります。 今回は、そんな早期介入のための心理療法であるR-TEPと、グループで行うG-TEPについてご紹介します。 R-TEPとは? R-TEP(Recent Traumatic Episode Protocol)は、最近起きたつらい出来事に対して行うEMDRのプロトコルです。 特徴は、出来事だけを見るのではなく、その出来事が起きてから現在までを一つの「ストーリー」として整理していくことです。 例えば事故を経験した方であれば、 ・事故の瞬間・救急搬送されたこと・その後の生活・今も残っている不安 この一連の流れを振り返りながら、今も苦痛が強く残っている場面を見つけ、一つずつ丁寧に処理していきます。 「出来事全体を整理する」というイメージに近いかもしれません。 G-TEPという方法もあります もう一つ、G-TEPという方法があります。 これはR-TEPをグループで行えるようにしたプログラムです。 「グループでトラウマの話をするの?」 と思われるかもしれませんが、その必要はありません。 専用のワークシートを使って、自分のペースで進めるため、自分の体験を詳しく話さなくても取り組むことができます。 同じような経験をした人と同じ空間にいながら、自分自身の心と向き合える方法です。 人道支援としてのEMDR EMDRには、JEMDRA-HAP(Japan EMDR Association Humanitarian Assistance Program)という人道支援活動があります。 自然災害や戦災、テロなどの被災者に対して、EMDRを用いた心理的支援を行うための組織で、世界各国のEMDR-HAPとも連携しながら活動しています。 今回の熊本地震でも、JEMDRA-HAPの皆さんが支援に向けて動いていると伺いました。 災害では、住まいや生活の支援が注目される一方で、心のケアもとても大切です。 もちろん、被災直後は安全の確保や生活を立て直すことが最優先です。 その上で、不安や恐怖が長く続く方に対して、このような専門的な心理支援が行われていることを、多くの方に知っていただけたらと思います。 このたびの地震で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。 一日も早く安心して過ごせる日常が戻りますよう、お祈りしております。 ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/ 【RーTEP/GーTEP RISC研修会】 講師:益田充、仁木啓介 ファシリテーター:浅山耕介 2026.8.2開催
- EMDRってどんなことをするの?無料個別説明会を開催します
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)に興味を持っている方へ 無料個別説明会を開催します 「EMDRという言葉は聞いたことがあるけれど、どんな心理療法なのかわからない」 「トラウマ治療に興味はあるけれど、自分に合うのか不安」 そんな思いをお持ちの方はいらっしゃいませんか。 最近では、EMDRについてインターネットやSNSで目にする機会も増えてきました。しかし、実際には「どんなことをするの?」「つらい出来事を詳しく話さなければいけないの?」「どのくらいで効果がでるの?」など、さまざまな疑問や不安を感じている方も少なくありません。 そこで、このたびEMDRについて知っていただくための無料個別説明会を開催することにしました。 【この説明会でお伝えすること】 説明会では、EMDRについてわかりやすくご説明します。 EMDRとはどのような心理療法なのか どのような悩みに用いられているのか 治療はどのような流れで進むのか オンラインでも受けられるのか よくあるご質問 など 個別形式ですので、ご自身が気になっていることをその場でご質問いただけます。 【説明会について】 この説明会は、EMDRという心理療法について知っていただくための場です。 カウンセリングや個別相談ではありませんので、現在のお悩みを詳しくお伺いしたり、治療方針をご提案したりすることはありません。 「まずはEMDRについて知りたい」「受けるかどうかは、そのあと考えたい」 そのような方も安心してご参加いただけます。 【開催概要】 開催日(4日間限定) 2026年7月23日(木) 2026年7月27日(月) 2026年7月30日(木) 2026年8月3日(月) 時間 10:00~18:00の間で30分 定員 各日3名限定 参加方法 対面・オンラインどちらでも可能(※オンラインはカメラONで参加できる方) 参加費 無料 【お申込み方法】 メールまたは公式LINEより、「説明会希望」とご記入のうえ、 お名前 ご希望日時 参加方法(対面またはオンライン) をお知らせください。確認後、折り返しご連絡いたします。 EMDRは、トラウマ治療として世界中で活用されている心理療法の一つです。 「自分に合う治療なのだろうか」「まずは正しい情報を知りたい」 そのような方にとって、安心して第一歩を踏み出せる機会になればと思っています。 どうぞお気軽にご参加ください。 ハピネス発達心理相談室🍀 https://www.hapi-soudan.com/
- 解決志向アプローチ
解決 今日は、解決志向アプローチのセミナーを受講しました。 解決志向アプローチでは、「問題を分析すること」よりも、「解決に向かう変化」や「すでに持っている力」に目を向けます。 私は普段、トラウマを抱えた方へのカウンセリングを行っています。 そのため最初は、「問題ではなく解決を見る」という考え方は、トラウマ治療とは少し反対の方向を向いているようにも感じました。 トラウマ治療では、避け続けてきたつらい記憶を、安全な環境の中で丁寧に扱うことが必要になる場面があります。過去を見つめ、記憶を再処理することは、回復に欠かせないプロセスです。 しかし、講義を受けながら気づいたことがあります。 トラウマを扱うからこそ、「未来を見る視点」が必要なのではないかということです。 EMDRでも、つらい記憶を処理する前には、リソース(その人が持っている力や安心感)を育てます。 「安心できる場所」をイメージしたり、自分を支えてくれる人を思い浮かべたり、「こんな自分になれたらいい」という未来を描いたりすることがあります。 これは単なる準備ではありません。 希望を感じられること。回復する自分を少しでも想像できること。 そのこと自体が、トラウマと向き合うための大切な土台になります。 解決志向アプローチが大切にしている「強み」や「例外」、「すでにできていること」に目を向ける姿勢は、トラウマ治療においても、その人の回復力を支える重要な視点だと感じました。 問題を見ることと、未来を見ること。 どちらか一方ではなく、その両方があるからこそ、人は安心して変化していけるのかもしれません。 講義の最後に紹介された「ミラクルクエスチョン」が、とても印象に残っています。 「もし今夜、奇跡が起きてあなたの問題が解決していたとしたら、明日の朝、あなたは何によってその奇跡に気づきますか?」 私たちは「問題がなくなること」を願いがちですが、本当に大切なのは、その先でどんな毎日を送りたいのかを思い描くことなのかもしれません。 あなたなら、何が変わっていたら、「奇跡が起きた」と気づきますか? 🍀ハピネス発達心理相談室 この記事が、あなた自身を理解するきっかけになればうれしいです。 発達特性やトラウマ、人間関係の悩みなど、一人では整理しきれない気持ちを抱えている方へ。カウンセリングでは、お話を伺いながら、一緒に整理し、自分らしく過ごすための方法を考えていきます。 詳しくはホームページで↓ https://www.hapi-soudan.com/ 【今回受けたセミナー】 「解決志向アプローチ 変化を育む会話の技法」田中ひな子 原宿カウンセリングセンター日本ブリーフサイコセラピー学会主催 2026.7.5 ブリーフサイコセラピーセミナー
- 当事者研究を学んで感じたこと 〜「意味づけ介助」は身近な人にもできる支援〜
意味が分かって納得する女性 先日、「当事者研究」について学ぶ機会がありました。 当事者研究とは、困りごとを「治す対象」として見るのではなく、自分自身の経験を仲間と一緒に言葉にし、「なぜそうなるのだろう」と研究していく実践です。 北海道・浦河町のべてるの家で始まり、現在では発達障害や精神障害など、さまざまな分野に広がっています。 今回の研修で特に印象に残ったのが、「意味づけ介助」という考え方でした。 意味づけ介助とは、「他者の行動の意味や意図について、自分なりの推測を共有すること」です。 例えば、 「今日の会議であの人が無表情だったけど、怒っていたのかな…」「私、何か失礼なことを言ってしまったのかな…」 そんな不安を一人で抱え込むのではなく、 「私は特に気にならなかったよ。」 「その人は誰に対してもあんな感じだよ。」 「後から気になることがあれば伝えてくれる人だから大丈夫じゃないかな。」 と、それぞれの見方を伝え合うことで、一人ではたどり着けなかった新しい意味づけが生まれます。 実際に講師の綾屋先生も、この「意味づけ介助」を周囲にお願いするようになってから、一人で抱え込んで体調を崩すことが減ったと紹介されていました。 私は、この考え方は支援者だけができるものではないと感じました。 家族や友人、職場の同僚など、身近な人同士でも十分にできることではないでしょうか。 「私はこう見えたよ。」 「そんなふうには感じなかったよ。」 「こういう可能性もあるかもしれないね。」 そんな一言が、一人で考え続けて苦しくなっている人の助けになることがあります。 もちろん、正解を教えることではありません。一緒に考え、複数の見方を共有することが大切なのだと思います。 心理職としても、「答えを伝える支援」だけでなく、「一緒に意味を探していく支援」の大切さを改めて感じました。 これからのカウンセリングでも、この「意味づけ介助」という視点を大切にしていきたいと思います。 🍀ハピネス発達心理相談室 この記事が、あなた自身を理解するきっかけになればうれしいです。 発達特性やトラウマ、人間関係の悩みなど、一人では整理しきれない気持ちを抱えている方へ。カウンセリングでは、お話を伺いながら、一緒に整理し、自分らしく過ごすための方法を考えていきます。 詳しくはホームページで↓ https://www.hapi-soudan.com/ 【今回の研修】 「当事者研究に学ぶ経験をめぐる支援のヒントー身体や仲間とのつながりに着目するー」 東京大学先端科学技術研究センター 教授 綾屋紗月 教育関係共同利用拠点事業 令和8年度第1回FD/SD研修 2026年6月29日
- ADHD治療アプリ「エンデバーライド」が登場しました
アプリでゲーム 2026年6月、国内初となるADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療用アプリ「エンデバーライド」が発売されました。 これまでADHDの治療というと、薬物療法や環境調整、心理社会的支援が中心でしたが、新たな選択肢としてデジタル治療(DTx)が加わることになります。 エンデバーライドとは? エンデバーライドは、スマートフォンやタブレットを使用する治療用アプリです。 ゲームのような画面で、 ・乗り物を操作する・障害物を避ける・キャラクターを捕まえる といった複数の課題を同時に行います。 このトレーニングを通して、注意や集中、行動のコントロールに関わる脳の働きを活性化させ、不注意症状の改善を目指します。 利用できる人 対象は 6歳以上18歳未満のADHDの診断を受けた方です。 利用するためには 医師の診断と処方が必要 で、自分でアプリストアから自由にダウンロードして使用することはできません。 また、1日約25分、6週間継続して利用することが推奨されています。 保険適用について エンデバーライドは公的医療保険の対象となっています。 公定価格は14,500円で、通常の3割負担の場合は自己負担額は約4,350円となります。 詳しくは主治医や自治体へ確認することをおすすめします。 ADHDが「治る」アプリではありません このニュースを見て、 「ゲームをするだけでADHDが治るの?」 と思われる方もいるかもしれません。 しかし、エンデバーライドはADHDそのものを治すものではありません。 臨床試験では、不注意症状の改善がみられていますが、すべての症状がなくなるわけではなく、効果には個人差があります。 選択肢が増えたことに意味がある 私が注目しているのは、「治療や支援の選択肢が増えた」という点です。 ADHDの特性や困りごとは一人ひとり異なります。 薬が合う人もいれば、環境調整やカウンセリングが役立つ人もいます。 その中で、デジタル技術を活用した新しい支援が加わることは、多くの子どもや家族にとって新たな可能性になるかもしれません。 おわりに ADHDの支援で大切なのは、「どの治療が一番優れているか」ではなく、「その人に何が合うか」を考えることです。 エンデバーライドも数ある選択肢のひとつです。 気になる方は、主治医や専門機関に相談してみてください。 発達特性による困りごとは、本人の努力不足ではなく、脳の特性と環境とのミスマッチによって生じることがあります。支援の選択肢が広がることは、本人や家族にとって大きな助けになるかもしれません。 こんな方はご相談ください ADHDと診断されたけれど納得できない ADHDとトラウマの違いを知りたい 薬だけでなく心理的な支援も受けたい 子どもの特性への関わり方に悩んでいる 発達特性・トラウマ専門 ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/ 参考文献 ADHDをアプリで治療、子供向けにきょう国内初の発売…ゲーム感覚で操作し症状改善 : 読売新聞 (2026/06/05参照)
- ゲームで改善!ADHD治療アプリ
ゲームで改善!ADHD治療アプリが厚労省の承認を取得 塩野義製薬が、小児期の注意欠如・多動症(ADHD)に対するデジタル治療用アプリ「ENDEAVORRIDE(エンデバーライド)®」の国内製造販売承認を取得しました。 エンデバーライドとは?本当にADHDが改善するの? エンデバーライドは、スマートフォンやタブレットを使い、小児のADHD症状の改善を目的としたデジタル治療アプリです。 アプリでは、乗り物を操縦しながら障害物を避け、ターゲットを集めていくゲームを行います。プレイヤーはマルチタスクをこなしながら気を散らす刺激を無視する必要があり、これが治療効果をもたらすとされています。 ゲームをあまりしない私にとって、他のゲームでも集中力やマルチタスク能力が求められるのでは?一般的なゲームと何が違うの?と疑問に思い、エンデバーライドの特徴を調べてみました。 エンデバーライドの特長 エンデバーライドを開発したのは、デジタル治療アプリを手がけるAkili社です。 同社によると、「単なるゲームではなく、数十年にわたる神経科学の研究成果と、脳内の特定の原因に直接働きかける独自の技術に基づいている」とのことです。 このアプリは、感覚刺激と運動刺激を組み合わせることで、脳内の特定の認知神経を選択的に活性化し、認知機能の向上を促します。 さらに、プレイヤーのパフォーマンスをリアルタイムで測定し、アルゴリズムが治療を個別にカスタマイズしていく仕組みになっています。どの脳領域をターゲットにするか、どのように刺激を与えるかが自動で調整されるのです。 アメリカではすでに実用化 エンデバーライドは、すでにアメリカでFDA(米国食品医薬品局)の認可を受け、病院での治療として使用されています。医師の診断のもと、必要な人に処方される形で提供されているようです。 日本でもこれから実用化が進んでいく予定であると考えられます。 まとめ ゲームを通じて脳を刺激し、その効果をリアルタイムでモニタリングしながら最適化する――デジタル技術と脳科学の進歩に驚かされます。 治療用アプリ、デジタルセラピューティクス(DTx) がますます注目されていくようです。 不注意や多動性、衝動性に悩む子どもたちが、ゲームを楽しみながら生活しやすくなる未来が実現するといいなと心から思います。 発売決定! 2026年6月5日より日本でも発売 医師の処方を受けダウンロードして利用するようです。 対象年齢は6歳以上18歳未満 1日約25分の治療を6週間継続 公的医療保険の対象 🍀発達障害・トラウマ専門カウンセリング🍀 自分がADHDかもしれないと思っている 診断は受けたけどしんどい 子どもがADHDと言われた ADHDだけでは説明できない生きづらさがある 発達障害の特性に詳しいカウンセラーが対応します オンラインでも対応しています お気軽にお問い合わせください。 ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/ ブログやホームページでも発達特性、ASDやADHDについて情報発信しています。 認知行動療法で改善! ADHD向け認知行動療法 定期的な声掛けで大学生活も安心! 大学生向けサポート 【参考文献】 塩野義製薬 https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2025/02/20250218.html Akili社 https://www.akiliinteractive.com/ (2025/04/01参照) ADHDをアプリで治療、子供向けにきょう国内初の発売…ゲーム感覚で操作し症状改善 : 読売新聞 (2026/06/05参照)
- 発達障害の知識は広まった。でも、生きやすくなったのだろうか
「私たちは知識の力をのんきに信じ、情報が普及すれば環境がよくなりそうに思っていました。まさか名前が記号として陳腐化し、知られた名前を石や棒みたいに武器にされる日が来るなんて、予想してませんでしたからね。」 ニキ リンコ 20年ほど前、発達障害という言葉は、今ほど一般的ではなかった。 学会では「発達障害」がホットなテーマとして扱われ、関連するシンポジウムには人が入りきれないほど集まっていた。 ASD、ADHD、LD——。それまで「変わっている」「落ち着きがない」「空気が読めない」と曖昧に扱われていたものに、名前がつき広まっていった時代だった。 あの頃、私たちはある種の希望を持っていた。 発達障害の知識が広まれば変わる。理解が進めば、生きづらさは減る。特性を知り、環境調整を行い、周囲が受け入れることができれば、発達障害の人たちはもっと生きやすくなる。本気でそう信じていた。 もちろん、実際に変わった部分もある。支援制度は増えた。合理的配慮という言葉も浸透した。診断を受けることで、「自分は怠けていたわけではなかった」と救われた人もいる。 けれど、今の現実を見ると、どうしても複雑な気持ちになる。 幼い頃から「何かしらの診断」を受ける子どもたち。 本人がまだ自分を理解する前に、「あなたはADHD」「自閉スペクトラムだから」とカテゴリー化されていく。 学校では「あの子はADHDだから仕方ないよね」と、公然と語られることもある。配慮の言葉のようでいて、その実“普通とは違う存在”として扱われている場面も少なくない。 SNSではさらに顕著だ。少しだけ心理学や精神医学の言葉を知った人たちが、他人を診断する。 「これASDっぽい」「絶対ADHD」そんな言葉が軽く飛び交う。 本来、人を理解するためにあったはずの知識が、いつの間にか人を分類し、切り分け、時には揶揄する道具にもなってしまっている。 知識が広まること自体は悪ではない。 むしろ必要だった。昔は「努力不足」「親の育て方」で片づけられていた苦しみが、ようやく可視化されたのだから。 でも、知識はそれだけでは人を救わない。 診断名を知ることと、相手を理解することは違う。 特性を知ることと、人として尊重することも違う。 「発達障害の理解」という言葉が広がる一方で、人を見る視線が逆に固定化されてしまった部分もあるように感じる。 では、これから何が変わればいいのだろう。 診断を増やすことなのか。 さらに知識を広めることなのか。 支援制度を整えていくことなのか。 正直、簡単には答えが出ない。 ただ少なくとも、「理解が広まれば自然とうまくいく」という、あの頃の楽観的な期待だけでは足りなかったのだと思う。 知識は人を救うこともある。でも使い方を間違えれば、人を傷つけ、分断し、ラベルの中に閉じ込めることもある。 だからこそ今、必要なのは、「発達障害を知ること」そのものよりも、その知識をどう社会の中で扱うのかを、考え続けることなのかもしれない。 私自身、まだ答えはわからない。 それでも、情報を集め続けること。現場の声を聴くこと。当事者の方や支援者の方と話すこと。いろんな立場の人同士で話し合うこと。 何が助けになり、何が傷つけになってしまうのかを、あきらめず考え続けること。 すぐに正解が出る問題ではない。だからこそ立ち止まらず問い続けなければいけないのだと思う。 ハピネス発達心理相談室 www.hapi-soudan.com ブログ | 発達障害・トラウマ専門カウンセリング ハピネス発達心理相談室 【参考文献】 ニキ リンコ「大喜利エクソダス」(2026)現代思想, vol.54-6, 05, p20-24.
- 聴こえているのに、聞き取れない ― 聴覚情報処理障害(APD)と発達障害
聴こえているのに聞き逃してしまう 「聴力検査は正常。でも、授業や会議になると急にわからなくなる」 「雑音の中で言葉が聞き取れず思考が停止する」 そんな“ズレ”を抱える人がいます。それが「聴覚情報処理障害(APD)」です。 APDは、聴覚の器質的な問題というより発達特性や注意や記憶などの認知的な問題、心理的な問題などの要因があると考えられています。 ■ APDは単なる「聞こえの問題」ではない 近年の報告では、APDの背景には 注意の持続や選択の難しさ ワーキングメモリの弱さ 不安や緊張などの心理的要因 など、複数の要素が絡み合っていることが指摘されています。 たとえば、周囲がざわつく教室で先生の声だけを拾うには、「不要な音を抑え、必要な音に注意を向け続ける力」が必要です。この力は、発達特性とも深く関わります。 ■ 発達障害との関連 APDはADHDやASDなどの発達障害と重なりやすい特性が多いようです。 ADHDのある人 → 注意の揺れやすさ、聴覚情報の保持の難しさが影響しやすい ASDのある人 → 音の選択的注意や感覚過敏、言語理解のスタイルの違いが影響することがある ここで大切なのは、「聞き取れない=努力不足」ではないということです。 情報処理のスタイルが違うだけで、怠慢ではありません。 むしろ、何度も聞き返すことへの遠慮や、「自分だけわからない」という孤立感のほうが、二次的なストレスを生みやすいのです。 ■ 支援の3つの柱 APDへの支援は、“耳を鍛える”だけでは不十分です。多面的なアプローチが重要になります。 ① 環境調整 前方の座席配置 雑音の少ない場所の確保 明瞭な話し方や繰り返しの配慮 補聴援助システム(送信マイクなど)の活用 「本人が頑張る」よりも、「環境を整える」ほうが即効性があります。 ② 代償手段の活用 聴覚だけに頼らない工夫 文字情報や図の併用 板書や資料の事前配布 メモや録音の活用 発達特性のある人にとっては、視覚優位の学習スタイルがフィットすることも多く、これは合理的配慮として非常に有効です。 ③ 聴覚トレーニング 聞き取り練習や注意・記憶のトレーニングは、「劇的改善」というよりも、慣れや処理効率の向上を目指します。 魔法のように変わるわけではありませんが、「できる部分を少しずつ広げる」意味があります。 ④ 心理的支援 実はここがとても重要です。 聞き誤りによる恥ずかしさ 叱責体験の積み重ね 「ちゃんと聞いて」と言われ続けた記憶 こうした経験が自己肯定感を下げていることも少なくありません。 カウンセリングでは、困りごとの整理だけでなく、「どう伝えれば楽になるか」という具体策も一緒に考えていきます。 ■ 個別性がカギ APDは一枚岩ではありません。 注意の問題が中心の人もいれば、不安が強くなると聞き取りが落ちる人もいます。 だからこそ、 聴覚特性 認知機能 心理状態 発達特性 これらを立体的に見ていく評価が欠かせません。 最後に 聴こえているのに、聞き取れない それは見えにくい困難です。 けれど、環境を整え、補う手段を使い、心理的な支えを持つことで、日常の負担は確実に軽くなります。 「どうせ自分は聞き取れない」ではなく、 「どうすれば楽に聞けるか」を一緒に探す APDを、能力の欠如ではなく“情報処理の個性”として捉えることが、発達支援の第一歩なのかもしれません。 【参考文献】 小渕千絵(2019)「聴覚情報処理障害(Auditory processing disorder, APD)の現状と対応」小児耳,2019;40(3):225-230.
- 「失礼な人」に見えてしまう理由 ― 会話には「所有権」がある ―
会話には「所有権」がある 「職場で普通に話しているつもりなのに、なぜか失礼な人だと思われてしまう」 「雑談がうまくできない」 支援やカウンセリングの現場で、こうした相談を受けることは少なくありません。 ご本人には悪気がまったくなく、「何がいけなかったのかわからない」と戸惑っていることも多いです。 そんなとき、説明のヒントとして役立つのが 「行為と発言の所有権」 という考え方です。 会話には「誰のものか」がある 私たちは会話の中で、無意識のうちに 「この話題は誰のものか」を行き来しています。 所有には大きく分けて、次の2つがあります。 知識による所有 専門知識、情報、判断、方法 経験による所有 感覚、気持ち、体験、つらさ、主観 この所有を取り違えると、 内容が正しくても「失礼」「わかっていない」と受け取られてしまうことがあります。 〇医師と患者の例 たとえば、医師と患者の関係。 患者が所有しているもの ・痛みの強さ ・つらさの感じ方 医師が所有しているもの ・症状の評価 ・治療の選択肢 ここで所有が逆転すると、違和感が生まれます。 患者が 「それ、注射で治りますよね」と治療法を断定する 医師が 「そんなに痛くないでしょ」と痛みを評価する どちらも、相手の所有に踏み込んで話している状態です。 正論であっても、相手は「軽く扱われた」「わかってもらえない」と感じやすくなります。 〇支援の現場での、よくある一言 ある方が、こんなふうに話してくれました。 「話しているとき、相手のためを思って言っているのに あとから『余計な一言だったかもしれない』と気づくんです」 そこで 「その話題は、今どちらが“持っている話”だったと思いますか?」 と聞いてみると、 「あ…相手の気持ちの話なのに、解決策を出してました」 と、はっとされることがあります。 失礼に見えてしまう原因は、 共感のなさではなく、所有の取り違えだった、というケースはとても多いです。 雑談でも、このズレはよく起こります。 雑談で起こりやすいズレ 相手の所有なのに、話してしまう例 相手が大変だった話をしているとき、すぐに解決策を言う 相手の話を整理してあげようとして、結論を先に言う 感情の話に、事実や正しさで返す 自分の所有なのに、話さない例 自分の意見を求められているのに、答えが見つからず黙る 「どう思う?」と聞かれても、正解を探してしまい話せない 共感はしているが、言葉にするタイミングがわからない どちらも、能力や人柄の問題ではありません。会話の「役割分担」が見えにくいだけです。 雑談が少し楽になる考え方 話す前や聞いている途中で、こんな問いを心の中で使ってみてください。 「今、この話は誰のもの?」 相手のもの →聞く、うなずく、くり返す 「そうだったんですね」「それは大変でしたね」 自分のもの →短くてもいいので、言葉にする 「私はこう思いました」「少し似た経験があります」 雑談は「うまく話すこと」より、持ち物を勝手に入れ替えないことが大切な場面も多いのです。 最後に 雑談が苦手なのは、性格が悪いからでも、空気が読めないからでもありません。 見えにくいルールを、まだ知らなかっただけ。 ルールが言葉になれば、会話は「感覚」ではなく「工夫」で対応できます。 【参考文献】 浦野茂(2018)「第5章場面にふさわしいやりとりのルールってどんなもの?」編者 綾屋紗月「ソーシャルマジョリティ研究 コミュニケーション学の共同創造」(pp.170-211)金子書房
- 集中のしかたが違う―モノトロピズムという視点―
「集中しすぎる」のではなく、「集中のしかたが違う」―モノトロピズムという視点― 「一つのことに極端に集中してしまう」「切り替えが苦手」こうした特徴は、自閉スペクトラム症(ASD)の特性として語られることがあります。 しかしそれは、「集中しすぎている」のではなく、注意の向け方そのものが異なると捉えることもできます。その理解の手がかりとなるのが、モノトロピズム(Monotropism)という理論です。 モノトロピズムとは、注意を一度に少数の対象へ深く向ける注意のスタイルのこと。多くのことに同時に注意を向けるスタイルと比べると、一点を強く照らすスポットライトのような集中が起こります。 この特性があると、興味のある分野には非常に深く没頭できます。時間を忘れて集中が続き、学習や創造的な活動に力を発揮しやすい、いわゆるフロー状態に入りやすいことも特徴です。 一方で、その注意を急に別の対象へ向けるには大きな負荷がかかります。突然の予定変更や声かけ、同時進行の作業などは、意思や努力の問題ではなく、注意の仕組み自体に強い負担を与えます。 そのため、支援の視点は「集中をやめさせる」ことではなく、集中できる流れをどう守るかに置くことが重要になります。 ・中断をできるだけ減らす ・切り替えには予告と時間を確保する ・一度に一つの作業で進められる環境を整える ・強い興味や関心を、安心や回復の資源として尊重する こうした工夫によって、その人が本来持っている力は、無理なく自然に発揮されやすくなります。 モノトロピズムは欠陥ではありません。世界と深く関わるための、ひとつの注意のスタイルです。 「集中できない/しすぎる」という二分法ではなく、集中のしかたの違いとして理解することが、本人にとっても周囲にとっても、より安心につながります。
- ADHD?それともトラウマ?
― 子どもの「落ち着きのなさ」に隠れている心のサイン ― 「もしかしてADHDかも?」と思ったときに お子さんが「集中できない」「落ち着かない」「すぐ気が散る」といった様子を見せると、 まず思い浮かぶのが ADHD(注意欠如・多動症) かもしれません。 でも実は、トラウマ(心の傷)によるストレス反応でも、 とても似た行動が見られることがあります。 多くの研究者が、トラウマによる症状はADHDと間違われやすいと指摘しています。 両方に共通して見られるサインには、 集中が続かない 気が散りやすい 聞いていないように見える 多動や落ち着きのなさ 寝つきが悪い などがあります。 トラウマとADHDの「見た目の似ている行動」 たとえばトラウマを経験した子どもは、 不安や怖さから常に体が「緊張モード」「警戒モード」になっていることがあります。 その結果、周囲から見ると「そわそわしている」「多動っぽい」と見えることがあります。 また、トラウマの記憶を思い出すような場面を避けようとして、 ぼーっとしたり、現実感がなくなる(解離)こともあります。 この状態は一見、「不注意」「上の空」に見えるかもしれません。 さらに、トラウマに関連する考えや映像がふいに頭に浮かび、 混乱したり、衝動的な行動をとってしまうこともあります。 これもADHDの「衝動性」とよく似ています。 ADHDとトラウマ、どちらか一方とは限らない トラウマは子どもの記憶・注意力・感情・行動・人間関係など、幅広い面に影響します。 もともとADHDの特性をもつお子さんがトラウマを経験すると、 その症状がより強く出ることもあります。 逆に、ADHDがあることで、トラウマの影響がより複雑に絡み合うこともあります。 「ADHDか、トラウマか」とどちらか一方を決めるのではなく、 両方の可能性を視野に入れて関わることが大切です。 行動の奥にある「心の声」を聴く 落ち着かない、話を聞けない、すぐイライラする—— そうした行動の裏には、 「怖かった」「つらかった」「どうしていいかわからない」といった 心の叫びや不安が隠れていることがあります。 子どもの行動を「困った」と捉える前に、 「この子は何を感じているんだろう?」 「どんな経験があったんだろう?」と立ち止まってみることが、 心を支える第一歩になります。 子どものペースで、安心を取り戻す お子さんが“困った行動”をしているとき、 それは“困らせようとしている”のではなく、 助けを求めるサインかもしれません。 安心できる環境で、気持ちを聴いてもらう時間を重ねていくと、 少しずつ落ち着きを取り戻していく子どもたちはたくさんいます。 焦らず、比べず、お子さんのペースで。 親御さん自身も、頑張りすぎないでくださいね。 ✍ まとめ トラウマによる症状はADHDとよく似ている 行動の背景には「怖さ」や「不安」が隠れていることも ADHDとトラウマはどちらか一方とは限らない 大切なのは「この子の心に何が起きているのか」を丁寧に見ること ハピネス発達心理相談室🌸 https://hapi-soudan.com 【参考文献】 兵庫県こころのケアセンター「ADHD?それとも子どものトラウマティックストレス?臨床家のためのガイド」 https://www.j-hits.org/_files/00127486/4_1_adhd.pdf (2025/10/28参照)












