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- ADHD治療アプリ「エンデバーライド」が登場しました
アプリでゲーム 2026年6月、国内初となるADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療用アプリ「エンデバーライド」が発売されました。 これまでADHDの治療というと、薬物療法や環境調整、心理社会的支援が中心でしたが、新たな選択肢としてデジタル治療(DTx)が加わることになります。 エンデバーライドとは? エンデバーライドは、スマートフォンやタブレットを使用する治療用アプリです。 ゲームのような画面で、 ・乗り物を操作する・障害物を避ける・キャラクターを捕まえる といった複数の課題を同時に行います。 このトレーニングを通して、注意や集中、行動のコントロールに関わる脳の働きを活性化させ、不注意症状の改善を目指します。 利用できる人 対象は 6歳以上18歳未満のADHDの診断を受けた方です。 利用するためには 医師の診断と処方が必要 で、自分でアプリストアから自由にダウンロードして使用することはできません。 また、1日約25分、6週間継続して利用することが推奨されています。 保険適用について エンデバーライドは公的医療保険の対象となっています。 公定価格は14,500円で、通常の3割負担の場合は自己負担額は約4,350円となります。 詳しくは主治医や自治体へ確認することをおすすめします。 ADHDが「治る」アプリではありません このニュースを見て、 「ゲームをするだけでADHDが治るの?」 と思われる方もいるかもしれません。 しかし、エンデバーライドはADHDそのものを治すものではありません。 臨床試験では、不注意症状の改善がみられていますが、すべての症状がなくなるわけではなく、効果には個人差があります。 選択肢が増えたことに意味がある 私が注目しているのは、「治療や支援の選択肢が増えた」という点です。 ADHDの特性や困りごとは一人ひとり異なります。 薬が合う人もいれば、環境調整やカウンセリングが役立つ人もいます。 その中で、デジタル技術を活用した新しい支援が加わることは、多くの子どもや家族にとって新たな可能性になるかもしれません。 おわりに ADHDの支援で大切なのは、「どの治療が一番優れているか」ではなく、「その人に何が合うか」を考えることです。 エンデバーライドも数ある選択肢のひとつです。 気になる方は、主治医や専門機関に相談してみてください。 発達特性による困りごとは、本人の努力不足ではなく、脳の特性と環境とのミスマッチによって生じることがあります。支援の選択肢が広がることは、本人や家族にとって大きな助けになるかもしれません。 こんな方はご相談ください ADHDと診断されたけれど納得できない ADHDとトラウマの違いを知りたい 薬だけでなく心理的な支援も受けたい 子どもの特性への関わり方に悩んでいる 発達特性・トラウマ専門 ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/ 参考文献 ADHDをアプリで治療、子供向けにきょう国内初の発売…ゲーム感覚で操作し症状改善 : 読売新聞 (2026/06/05参照)
- ゲームで改善!ADHD治療アプリ
ゲームで改善!ADHD治療アプリが厚労省の承認を取得 塩野義製薬が、小児期の注意欠如・多動症(ADHD)に対するデジタル治療用アプリ「ENDEAVORRIDE(エンデバーライド)®」の国内製造販売承認を取得しました。 エンデバーライドとは?本当にADHDが改善するの? エンデバーライドは、スマートフォンやタブレットを使い、小児のADHD症状の改善を目的としたデジタル治療アプリです。 アプリでは、乗り物を操縦しながら障害物を避け、ターゲットを集めていくゲームを行います。プレイヤーはマルチタスクをこなしながら気を散らす刺激を無視する必要があり、これが治療効果をもたらすとされています。 ゲームをあまりしない私にとって、他のゲームでも集中力やマルチタスク能力が求められるのでは?一般的なゲームと何が違うの?と疑問に思い、エンデバーライドの特徴を調べてみました。 エンデバーライドの特長 エンデバーライドを開発したのは、デジタル治療アプリを手がけるAkili社です。 同社によると、「単なるゲームではなく、数十年にわたる神経科学の研究成果と、脳内の特定の原因に直接働きかける独自の技術に基づいている」とのことです。 このアプリは、感覚刺激と運動刺激を組み合わせることで、脳内の特定の認知神経を選択的に活性化し、認知機能の向上を促します。 さらに、プレイヤーのパフォーマンスをリアルタイムで測定し、アルゴリズムが治療を個別にカスタマイズしていく仕組みになっています。どの脳領域をターゲットにするか、どのように刺激を与えるかが自動で調整されるのです。 アメリカではすでに実用化 エンデバーライドは、すでにアメリカでFDA(米国食品医薬品局)の認可を受け、病院での治療として使用されています。医師の診断のもと、必要な人に処方される形で提供されているようです。 日本でもこれから実用化が進んでいく予定であると考えられます。 まとめ ゲームを通じて脳を刺激し、その効果をリアルタイムでモニタリングしながら最適化する――デジタル技術と脳科学の進歩に驚かされます。 治療用アプリ、デジタルセラピューティクス(DTx) がますます注目されていくようです。 不注意や多動性、衝動性に悩む子どもたちが、ゲームを楽しみながら生活しやすくなる未来が実現するといいなと心から思います。 発売決定! 2026年6月5日より日本でも発売 医師の処方を受けダウンロードして利用するようです。 対象年齢は6歳以上18歳未満 1日約25分の治療を6週間継続 公的医療保険の対象 🍀発達障害・トラウマ専門カウンセリング🍀 自分がADHDかもしれないと思っている 診断は受けたけどしんどい 子どもがADHDと言われた ADHDだけでは説明できない生きづらさがある 発達障害の特性に詳しいカウンセラーが対応します オンラインでも対応しています お気軽にお問い合わせください。 ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/ ブログやホームページでも発達特性、ASDやADHDについて情報発信しています。 認知行動療法で改善! ADHD向け認知行動療法 定期的な声掛けで大学生活も安心! 大学生向けサポート 【参考文献】 塩野義製薬 https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2025/02/20250218.html Akili社 https://www.akiliinteractive.com/ (2025/04/01参照) ADHDをアプリで治療、子供向けにきょう国内初の発売…ゲーム感覚で操作し症状改善 : 読売新聞 (2026/06/05参照)
- 発達障害の知識は広まった。でも、生きやすくなったのだろうか
「私たちは知識の力をのんきに信じ、情報が普及すれば環境がよくなりそうに思っていました。まさか名前が記号として陳腐化し、知られた名前を石や棒みたいに武器にされる日が来るなんて、予想してませんでしたからね。」 ニキ リンコ 20年ほど前、発達障害という言葉は、今ほど一般的ではなかった。 学会では「発達障害」がホットなテーマとして扱われ、関連するシンポジウムには人が入りきれないほど集まっていた。 ASD、ADHD、LD——。それまで「変わっている」「落ち着きがない」「空気が読めない」と曖昧に扱われていたものに、名前がつき広まっていった時代だった。 あの頃、私たちはある種の希望を持っていた。 発達障害の知識が広まれば変わる。理解が進めば、生きづらさは減る。特性を知り、環境調整を行い、周囲が受け入れることができれば、発達障害の人たちはもっと生きやすくなる。本気でそう信じていた。 もちろん、実際に変わった部分もある。支援制度は増えた。合理的配慮という言葉も浸透した。診断を受けることで、「自分は怠けていたわけではなかった」と救われた人もいる。 けれど、今の現実を見ると、どうしても複雑な気持ちになる。 幼い頃から「何かしらの診断」を受ける子どもたち。 本人がまだ自分を理解する前に、「あなたはADHD」「自閉スペクトラムだから」とカテゴリー化されていく。 学校では「あの子はADHDだから仕方ないよね」と、公然と語られることもある。配慮の言葉のようでいて、その実“普通とは違う存在”として扱われている場面も少なくない。 SNSではさらに顕著だ。少しだけ心理学や精神医学の言葉を知った人たちが、他人を診断する。 「これASDっぽい」「絶対ADHD」そんな言葉が軽く飛び交う。 本来、人を理解するためにあったはずの知識が、いつの間にか人を分類し、切り分け、時には揶揄する道具にもなってしまっている。 知識が広まること自体は悪ではない。 むしろ必要だった。昔は「努力不足」「親の育て方」で片づけられていた苦しみが、ようやく可視化されたのだから。 でも、知識はそれだけでは人を救わない。 診断名を知ることと、相手を理解することは違う。 特性を知ることと、人として尊重することも違う。 「発達障害の理解」という言葉が広がる一方で、人を見る視線が逆に固定化されてしまった部分もあるように感じる。 では、これから何が変わればいいのだろう。 診断を増やすことなのか。 さらに知識を広めることなのか。 支援制度を整えていくことなのか。 正直、簡単には答えが出ない。 ただ少なくとも、「理解が広まれば自然とうまくいく」という、あの頃の楽観的な期待だけでは足りなかったのだと思う。 知識は人を救うこともある。でも使い方を間違えれば、人を傷つけ、分断し、ラベルの中に閉じ込めることもある。 だからこそ今、必要なのは、「発達障害を知ること」そのものよりも、その知識をどう社会の中で扱うのかを、考え続けることなのかもしれない。 私自身、まだ答えはわからない。 それでも、情報を集め続けること。現場の声を聴くこと。当事者の方や支援者の方と話すこと。いろんな立場の人同士で話し合うこと。 何が助けになり、何が傷つけになってしまうのかを、あきらめず考え続けること。 すぐに正解が出る問題ではない。だからこそ立ち止まらず問い続けなければいけないのだと思う。 ハピネス発達心理相談室 www.hapi-soudan.com ブログ | 発達障害・トラウマ専門カウンセリング ハピネス発達心理相談室 【参考文献】 ニキ リンコ「大喜利エクソダス」(2026)現代思想, vol.54-6, 05, p20-24.
- 聴こえているのに、聞き取れない ― 聴覚情報処理障害(APD)と発達障害
聴こえているのに聞き逃してしまう 「聴力検査は正常。でも、授業や会議になると急にわからなくなる」 「雑音の中で言葉が聞き取れず思考が停止する」 そんな“ズレ”を抱える人がいます。それが「聴覚情報処理障害(APD)」です。 APDは、聴覚の器質的な問題というより発達特性や注意や記憶などの認知的な問題、心理的な問題などの要因があると考えられています。 ■ APDは単なる「聞こえの問題」ではない 近年の報告では、APDの背景には 注意の持続や選択の難しさ ワーキングメモリの弱さ 不安や緊張などの心理的要因 など、複数の要素が絡み合っていることが指摘されています。 たとえば、周囲がざわつく教室で先生の声だけを拾うには、「不要な音を抑え、必要な音に注意を向け続ける力」が必要です。この力は、発達特性とも深く関わります。 ■ 発達障害との関連 APDはADHDやASDなどの発達障害と重なりやすい特性が多いようです。 ADHDのある人 → 注意の揺れやすさ、聴覚情報の保持の難しさが影響しやすい ASDのある人 → 音の選択的注意や感覚過敏、言語理解のスタイルの違いが影響することがある ここで大切なのは、「聞き取れない=努力不足」ではないということです。 情報処理のスタイルが違うだけで、怠慢ではありません。 むしろ、何度も聞き返すことへの遠慮や、「自分だけわからない」という孤立感のほうが、二次的なストレスを生みやすいのです。 ■ 支援の3つの柱 APDへの支援は、“耳を鍛える”だけでは不十分です。多面的なアプローチが重要になります。 ① 環境調整 前方の座席配置 雑音の少ない場所の確保 明瞭な話し方や繰り返しの配慮 補聴援助システム(送信マイクなど)の活用 「本人が頑張る」よりも、「環境を整える」ほうが即効性があります。 ② 代償手段の活用 聴覚だけに頼らない工夫 文字情報や図の併用 板書や資料の事前配布 メモや録音の活用 発達特性のある人にとっては、視覚優位の学習スタイルがフィットすることも多く、これは合理的配慮として非常に有効です。 ③ 聴覚トレーニング 聞き取り練習や注意・記憶のトレーニングは、「劇的改善」というよりも、慣れや処理効率の向上を目指します。 魔法のように変わるわけではありませんが、「できる部分を少しずつ広げる」意味があります。 ④ 心理的支援 実はここがとても重要です。 聞き誤りによる恥ずかしさ 叱責体験の積み重ね 「ちゃんと聞いて」と言われ続けた記憶 こうした経験が自己肯定感を下げていることも少なくありません。 カウンセリングでは、困りごとの整理だけでなく、「どう伝えれば楽になるか」という具体策も一緒に考えていきます。 ■ 個別性がカギ APDは一枚岩ではありません。 注意の問題が中心の人もいれば、不安が強くなると聞き取りが落ちる人もいます。 だからこそ、 聴覚特性 認知機能 心理状態 発達特性 これらを立体的に見ていく評価が欠かせません。 最後に 聴こえているのに、聞き取れない それは見えにくい困難です。 けれど、環境を整え、補う手段を使い、心理的な支えを持つことで、日常の負担は確実に軽くなります。 「どうせ自分は聞き取れない」ではなく、 「どうすれば楽に聞けるか」を一緒に探す APDを、能力の欠如ではなく“情報処理の個性”として捉えることが、発達支援の第一歩なのかもしれません。 【参考文献】 小渕千絵(2019)「聴覚情報処理障害(Auditory processing disorder, APD)の現状と対応」小児耳,2019;40(3):225-230.
- 「失礼な人」に見えてしまう理由 ― 会話には「所有権」がある ―
会話には「所有権」がある 「職場で普通に話しているつもりなのに、なぜか失礼な人だと思われてしまう」 「雑談がうまくできない」 支援やカウンセリングの現場で、こうした相談を受けることは少なくありません。 ご本人には悪気がまったくなく、「何がいけなかったのかわからない」と戸惑っていることも多いです。 そんなとき、説明のヒントとして役立つのが 「行為と発言の所有権」 という考え方です。 会話には「誰のものか」がある 私たちは会話の中で、無意識のうちに 「この話題は誰のものか」を行き来しています。 所有には大きく分けて、次の2つがあります。 知識による所有 専門知識、情報、判断、方法 経験による所有 感覚、気持ち、体験、つらさ、主観 この所有を取り違えると、 内容が正しくても「失礼」「わかっていない」と受け取られてしまうことがあります。 〇医師と患者の例 たとえば、医師と患者の関係。 患者が所有しているもの ・痛みの強さ ・つらさの感じ方 医師が所有しているもの ・症状の評価 ・治療の選択肢 ここで所有が逆転すると、違和感が生まれます。 患者が 「それ、注射で治りますよね」と治療法を断定する 医師が 「そんなに痛くないでしょ」と痛みを評価する どちらも、相手の所有に踏み込んで話している状態です。 正論であっても、相手は「軽く扱われた」「わかってもらえない」と感じやすくなります。 〇支援の現場での、よくある一言 ある方が、こんなふうに話してくれました。 「話しているとき、相手のためを思って言っているのに あとから『余計な一言だったかもしれない』と気づくんです」 そこで 「その話題は、今どちらが“持っている話”だったと思いますか?」 と聞いてみると、 「あ…相手の気持ちの話なのに、解決策を出してました」 と、はっとされることがあります。 失礼に見えてしまう原因は、 共感のなさではなく、所有の取り違えだった、というケースはとても多いです。 雑談でも、このズレはよく起こります。 雑談で起こりやすいズレ 相手の所有なのに、話してしまう例 相手が大変だった話をしているとき、すぐに解決策を言う 相手の話を整理してあげようとして、結論を先に言う 感情の話に、事実や正しさで返す 自分の所有なのに、話さない例 自分の意見を求められているのに、答えが見つからず黙る 「どう思う?」と聞かれても、正解を探してしまい話せない 共感はしているが、言葉にするタイミングがわからない どちらも、能力や人柄の問題ではありません。会話の「役割分担」が見えにくいだけです。 雑談が少し楽になる考え方 話す前や聞いている途中で、こんな問いを心の中で使ってみてください。 「今、この話は誰のもの?」 相手のもの →聞く、うなずく、くり返す 「そうだったんですね」「それは大変でしたね」 自分のもの →短くてもいいので、言葉にする 「私はこう思いました」「少し似た経験があります」 雑談は「うまく話すこと」より、持ち物を勝手に入れ替えないことが大切な場面も多いのです。 最後に 雑談が苦手なのは、性格が悪いからでも、空気が読めないからでもありません。 見えにくいルールを、まだ知らなかっただけ。 ルールが言葉になれば、会話は「感覚」ではなく「工夫」で対応できます。 【参考文献】 浦野茂(2018)「第5章場面にふさわしいやりとりのルールってどんなもの?」編者 綾屋紗月「ソーシャルマジョリティ研究 コミュニケーション学の共同創造」(pp.170-211)金子書房
- 集中のしかたが違う―モノトロピズムという視点―
「集中しすぎる」のではなく、「集中のしかたが違う」―モノトロピズムという視点― 「一つのことに極端に集中してしまう」「切り替えが苦手」こうした特徴は、自閉スペクトラム症(ASD)の特性として語られることがあります。 しかしそれは、「集中しすぎている」のではなく、注意の向け方そのものが異なると捉えることもできます。その理解の手がかりとなるのが、モノトロピズム(Monotropism)という理論です。 モノトロピズムとは、注意を一度に少数の対象へ深く向ける注意のスタイルのこと。多くのことに同時に注意を向けるスタイルと比べると、一点を強く照らすスポットライトのような集中が起こります。 この特性があると、興味のある分野には非常に深く没頭できます。時間を忘れて集中が続き、学習や創造的な活動に力を発揮しやすい、いわゆるフロー状態に入りやすいことも特徴です。 一方で、その注意を急に別の対象へ向けるには大きな負荷がかかります。突然の予定変更や声かけ、同時進行の作業などは、意思や努力の問題ではなく、注意の仕組み自体に強い負担を与えます。 そのため、支援の視点は「集中をやめさせる」ことではなく、集中できる流れをどう守るかに置くことが重要になります。 ・中断をできるだけ減らす ・切り替えには予告と時間を確保する ・一度に一つの作業で進められる環境を整える ・強い興味や関心を、安心や回復の資源として尊重する こうした工夫によって、その人が本来持っている力は、無理なく自然に発揮されやすくなります。 モノトロピズムは欠陥ではありません。世界と深く関わるための、ひとつの注意のスタイルです。 「集中できない/しすぎる」という二分法ではなく、集中のしかたの違いとして理解することが、本人にとっても周囲にとっても、より安心につながります。
- ADHD?それともトラウマ?
― 子どもの「落ち着きのなさ」に隠れている心のサイン ― 「もしかしてADHDかも?」と思ったときに お子さんが「集中できない」「落ち着かない」「すぐ気が散る」といった様子を見せると、 まず思い浮かぶのが ADHD(注意欠如・多動症) かもしれません。 でも実は、トラウマ(心の傷)によるストレス反応でも、 とても似た行動が見られることがあります。 多くの研究者が、トラウマによる症状はADHDと間違われやすいと指摘しています。 両方に共通して見られるサインには、 集中が続かない 気が散りやすい 聞いていないように見える 多動や落ち着きのなさ 寝つきが悪い などがあります。 トラウマとADHDの「見た目の似ている行動」 たとえばトラウマを経験した子どもは、 不安や怖さから常に体が「緊張モード」「警戒モード」になっていることがあります。 その結果、周囲から見ると「そわそわしている」「多動っぽい」と見えることがあります。 また、トラウマの記憶を思い出すような場面を避けようとして、 ぼーっとしたり、現実感がなくなる(解離)こともあります。 この状態は一見、「不注意」「上の空」に見えるかもしれません。 さらに、トラウマに関連する考えや映像がふいに頭に浮かび、 混乱したり、衝動的な行動をとってしまうこともあります。 これもADHDの「衝動性」とよく似ています。 ADHDとトラウマ、どちらか一方とは限らない トラウマは子どもの記憶・注意力・感情・行動・人間関係など、幅広い面に影響します。 もともとADHDの特性をもつお子さんがトラウマを経験すると、 その症状がより強く出ることもあります。 逆に、ADHDがあることで、トラウマの影響がより複雑に絡み合うこともあります。 「ADHDか、トラウマか」とどちらか一方を決めるのではなく、 両方の可能性を視野に入れて関わることが大切です。 行動の奥にある「心の声」を聴く 落ち着かない、話を聞けない、すぐイライラする—— そうした行動の裏には、 「怖かった」「つらかった」「どうしていいかわからない」といった 心の叫びや不安が隠れていることがあります。 子どもの行動を「困った」と捉える前に、 「この子は何を感じているんだろう?」 「どんな経験があったんだろう?」と立ち止まってみることが、 心を支える第一歩になります。 子どものペースで、安心を取り戻す お子さんが“困った行動”をしているとき、 それは“困らせようとしている”のではなく、 助けを求めるサインかもしれません。 安心できる環境で、気持ちを聴いてもらう時間を重ねていくと、 少しずつ落ち着きを取り戻していく子どもたちはたくさんいます。 焦らず、比べず、お子さんのペースで。 親御さん自身も、頑張りすぎないでくださいね。 ✍ まとめ トラウマによる症状はADHDとよく似ている 行動の背景には「怖さ」や「不安」が隠れていることも ADHDとトラウマはどちらか一方とは限らない 大切なのは「この子の心に何が起きているのか」を丁寧に見ること ハピネス発達心理相談室🌸 https://hapi-soudan.com 【参考文献】 兵庫県こころのケアセンター「ADHD?それとも子どものトラウマティックストレス?臨床家のためのガイド」 https://www.j-hits.org/_files/00127486/4_1_adhd.pdf (2025/10/28参照)
- 予測符号化理論と発達障害
予測符号化理論と発達障害 — 支援に生かせるヒント 1️⃣ 予測符号化理論とは? 予測符号化理論は、脳の働きを説明する最近注目の理論です。かんたんに言うと、「脳は未来を予測して動いている」という考え方。 ●脳はつねに「次に何が起こるか」を予想する ●実際に起きたことと比べて、ズレ(予測誤差)を修正する ●この繰り返しで、世界を理解したり行動したりしている この理論は「ベイズ推定」という確率の考え方に似ていて、新しい情報が入るたびに予測をアップデートしているイメージです。 2️⃣ 発達障害との関係 自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなど、発達障害がある人はこの「予測」の仕組みがうまく働きにくいことがあるといわれています。れ ●予測が外れると強いストレスを感じる ●突然の予定変更が苦手 ●感覚過敏で、音や光などの刺激を予測しづらい ●先の見通しがないと、頭の中が不安でいっぱいになる 結果として、毎日の生活や学校・職場で疲れやすくなったり、パニックや不安、強いこだわりが出ることがあります。 3️⃣ 支援のヒント(実生活でできること) 【視覚化】 ●朝の準備や持ち物をイラストや写真でチェックリスト化 ●今日の予定をホワイトボードやカレンダーに見える化 ●新しい場所に行くときは、写真や動画で事前に確認 【構造化】 ●予定の時間を色分けしたタイムスケジュール ●作業のステップを紙にまとめて見やすく ●片付ける場所にラベルをつける 【予測しやすい声かけ】 ●「あと5分で次のことするよ」と事前に知らせる ●予定変更がある日は朝のうちに説明する ●初めての体験は写真や動画でシミュレーション 【 ストレス対策】 ●イヤーマフ・サングラスなどで刺激を減らす ●ひとりになれる時間を確保する ●「練習タイム」を作って失敗してもOKな環境にする 4️⃣ まとめ 予測符号化理論を知ると、「支援はただの甘やかしじゃない」ことがわかります。 視覚化 → 脳の予測を助ける 構造化 → 未来がわかるから安心できる 声かけ → 脳の負担をやわらげる 先がわかると、人は落ち着く。支援は、その「予測」を外から補う方法です。 【メッセージ】 発達障害のある人も、予測の仕組みがちょっとサポートされるだけで力を発揮しやすくなります。 「ちょっと先が見える」「やることが整理されてる」そんな環境を整えることが、毎日の安心と成長につながります。 発達障害についてのご相談は ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/ 【参考文献】本田秀夫(2025)「自閉スペクトラム症の人たちにおける不安」こころの科学243, pp.80-84, 日本評論社
- TSプロトコール・チャンスEMDR
TSプロトコールとは、子ども虐待と複雑性PTSDへの簡易処理技法で、トラウマ治療のEMDRから派生した治療法です。 パルサーという振動を出す機器を両手に持ち、おなかや鎖骨の下などにあてて体に残っている不快感を頭のてっぺんから出していくイメージで行います。 EMDRとの違いは、記憶を想起しないことにあります。トラウマ記憶を想起せずに身体の不快感、違和感をターゲットにアプローチしていくボトムアップ型の技法です。漢方薬などの処方とTSプロトコールを合わせて行うことでフラッシュバックが改善されるようです。 記憶を無理に思い出さずに短期間で治療を行うことで安全に治療を行うことができます。1回10分ほどの治療を4~6回程度おこなうとフラッシュバックが軽減されるようです。 また、自閉スペクトラムの方のタイムスリップ現象には同じくパルサーを使った「チャンスEMDR」という方法もあります。イメージしながら目を動かすことが苦手な方や、トラウマ記憶がたくさんある方などに向いている技法です。 「記憶を思い出すのがこわい」「何から相談したらいいかわからない」そんな方でも、TSプロトコールは安心して始められるケア方法です。 TSプロトコールを試してみたい! https://www.hapi-soudan.com/ トラウマやフラッシュバックにはEMDRも効果が認められています EMDRとは 🍀 フラッシュバック・トラウマケアでお困りの方へ 🍀 記憶を無理に思い出さなくていい 短時間・短期間で負担を減らす新しい技法 オンライン対応/全国からご相談いただけます 「自分に合うか不安…」という方も、まずはお気軽にご連絡ください。 ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/ 【参考文献】 杉山登志郎「テキストブックTSプロトコール 子ども虐待と複雑性PTSDへの簡易処理技法」日本評論社,2021
- 相手を支配する‐ガスライティング
ガスライティングとは? 「もしかして私がおかしいのかな?」 「記憶が間違っているのかも…」 こんなふうに、自分の感覚や記憶を疑ってしまう状態に追い込まれることがあります。その背後にあるのが ガスライティング という心理的支配の手口です。 ガスライティングでは、相手に偽りの情報を与えたり、「そんなこと言っていない」「やっていない」と繰り返し否定したりして、あたかも相手の勘違いのように思わせます。ときには偽の証拠を仕組んで、さらに混乱させることもあります。 映画『ガス燈』では、夫が妻に「最近、君は失くし物が多い」と言いながら、実際には妻の持ち物を自分で隠してしまいます。そして「ほら、僕の言った通りだろう」と責め立て、妻に「自分が間違っているのかもしれない」と思わせていくのです。 このように、ガスライティングは相手を自分に依存させていきます。 例えば、誰かと交流しようとすると「君は僕を大切にしてくれない」と罪悪感を植え付け、周囲から孤立させることがあります。さらに「そんな大げさな」「ずうずうしい」と相手の気持ちを軽んじ、何度も繰り返すことで「やっぱり自分がおかしいのかもしれない」と思わせてしまうのです。 やがて相手は自信を失い、加害者に依存するようになります。 そして加害者は「関係を終わらせてもいいんだぞ」と脅したり、逆に甘い言葉をかけたりしながら、より強くコントロールしていきます。 ガスライティングは単なる意見の食い違いではなく、相手の心を巧みに揺さぶり、支配しようとする危険な行為です。 ガスライティングに気づいたときの対応策 もし「おかしいな」「しんどいな」と感じたら、まずはその感覚を大事にしてください。 自分の中の違和感を無理に打ち消す必要はありません。 また、信頼できる友人や家族に話してみることも有効です。第三者に打ち明けることで「やっぱり自分の感覚は正しかったんだ」と確認できることがあります。 それでも不安が強いときや混乱が続くときは、専門の相談機関やカウンセリングを利用するのも一つの方法です。安心できる場で自分の気持ちを言葉にすることが、回復への第一歩になります。 一人で抱え込まなくても大丈夫です。 つながりの中で、自分の感覚を取り戻していけるはずです。 参考文献:アメリア・ケリー, 野坂祐子訳(2024)『ガスライティングという支配-関係性におけるトラウマとその回復』日本評論社 ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/
- ADHDと処理速度
以前ジョブコーチをしていた時に、ADHDの方が働く職場の方によく言われたのが、「説明はちゃんとわかっているはずなのに、実際作業をさせると思ったほどできない」というものです。 できるはずなのにやらない、さぼっている、やる気がない…など、評価があまり良くありません。 本人は、「なんか焦ってしまいうまくいかない」と、さぼっているわけではない様子です。 なぜこのようなことになるのか、ひとつにADHDの認知の特徴があると考えられます。 ADHDの認知の特徴として、処理速度が低いことがいわれています。 大人の人の知能検査でよく使われるのがウエクスラー式知能検査、WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)です。子供用にはWISC(Wechsler Intelligence Scale for Children)があります。 WAISでは、全般的なIQ(FSIQ)、言語理解指標(VCI)、知覚推理指標(PRI)、ワーキングメモリー指標(WMI)、処理速度指標(PSI)の5つの合成得点が算出されます。 このように全般的なIQだけではなく4つの特定の認知に関しても測定をするので、何が得意で何が苦手かがわかってきます。また、IQを一般的な指標と比較するだけではなく、自分自身の中の認知能力の差を知ることもできます。 ADHDではこの知能検査のなかの処理速度指標(PSI)が最も低くなることが示されています。処理速度は手際のよい作業や筆記スキル、意欲、プランニングなどに関与しているといわれています。 言語理解や知覚推理など他の認知能力が高いと、さらに処理速度との差が大きくなります。 そうすると実際の職場や学校で困ることが起こってきます。 「話しているとちゃんとできそうなのに、実際作業をさせると思ったほどできない」というものです。 言語理解などの能力は高いので指示を理解しやりとりもできているのに、手際よく作業をすることが苦手なのです。 周囲の人からすると、言語理解の高さのレベルで判断しているので、作業が遅いのは怠けているから、やる気がないからだと見えてしまうのです。 ADHD当人も自分の頭の中では理解ができているのに、思ったよりできないことに焦りを感じ、どうして自分は出来ないんだろうと自分を責めたり、自信を失ったりします。 子どもの頃からそのようなことが続いていると自分に対する否定的な認知が染みついてしまいます。 「自分はダメな人間だ」「恥ずかしい人間だ」「きっと失敗する」などです。 正しくは「自分のなかの他の能力と比較して処理速度が遅い」だけなのです。 自分の能力を客観視することで得意不得意を把握し、苦手な部分は工夫で補い、できるところはもっと伸ばすことができます。 得意な面、苦手な面を周囲の人に伝えることで、特徴が理解され対応も変わってくることがあります。 自分の能力を知る必要のある場合、WAISなどの知能検査は病院や発達障害支援センターなどの支援機関、発達検査などをおこなっている民間のカウンセリングルームなどで受けることができます。 病院や支援機関などは順番待ちのところも多いようです。民間のカウンセリングルームなどではそれぞれ検査料が設定してあり基本的には全額自己負担となります。 ADHDの処理速度や認知の偏りでお困りの方は ADHD向け認知行動療法 🍀ハピネス発達心理相談室🍀 ハピネス発達心理相談室では、ADHD向け認知行動療法、大学生向けサポートなど ADHDの特性理解と実生活での対処法に取り組んでいます。 今の「やりにくさ」「自信のなさ」について専門的に話してみたい 学校や職場での困りごとをどう伝えたらいいかわからない オンライン/対面どちらも対応可 お気軽にお問い合わせください。 https://www.hapi-soudan.com/ 【参考文献】 藤田和弘,前川久男,大六一志,山中克夫「日本版WAIS-Ⅲの解釈事例と臨床研究」 日本文化科学社,2011
- ADHDと偽るアメリカの学生
ADHDと偽り診断を受けるアメリカの学生について アメリカの大学で学んでいる障害をもった学生の割合は日本の10倍以上となっています。なかでも最近はADHDの学生数が増加しており、一部には偽ADHDも含まれていることが問題となっています。 アメリカ国内の高等教育機関に在籍する障害のある学部生数は約347.8万人で、 学生全体の20.5%となっています(2019-2020年調べ)。 日本国内では障害をもつ学生数は58,141人で、学生全体の1.79%(2023年調べ)であり、比較するとアメリカは日本の10倍以上となります。 アメリカでは障害をもった学生が日本と比較してだいぶ多いのですが、どのような障害が多いのでしょうか。 アメリカの高等教育機関で支援を受けている学生の障害種別は精神障害、ADHD(注意欠如多動症)、SLD(限局性学習症)が多いようです。 特にADHDの割合が2000年には6.7%だったのに2008年には19.1%と3倍近くに増加しています。16年前のデータなのでその後さらに増えていることが考えられます。 (英語が苦手なため最新のデータが探せずにすいません。) アメリカでは実際にADHDの人が増えているのでしょうか。 増えている理由は、ADHDの理解や認知が進み診断される人が多くなったことなどが考えられますが、他にもアメリカでは、詐病や偽装によりADHDの診断を受けている人がいるからといわれています。 詐病や偽装はADHDに限らず他の病気でもみられることです。様々な理由から自分の症状を偽って申告することや実際よりも重いように見せることで、何らかのベネフィットを得ていることがあります。 高等教育機関に通う学生がADHDと偽り診断を受ける理由はなんでしょうか。 なぜADHDと偽り診断を受けるのか、その理由には、大学での支援(試験時間延長や課題の軽減、試験を個別に受けるなど)を利用するためや、成績向上のため集中力を高める効果があるといわれている薬(メチルフェニデート等)を処方してもらうためなどがあるようです。その他にも娯楽や転売目的のため偽りの診断を受け薬を処方してもらうことがあるといわれています。 日本ではどうなのでしょう。 日本でもADHDの学生は増えています。2015年には障害をもった学生のうちADHDの学生は2.6%だったのが、2023年には7.0%ほどになっています。アメリカと比較するとまだ少ない数です。2008年で比較するとアメリカは19.1%、日本では0.8%でした。日本で発達障害者支援法ができたのが2004年ですので、ADHDの支援はまだまだ遅れていることがわかります。 今後ADHDへの認知や支援が進むことで、アメリカで問題となっている偽りの診断を受ける人が日本でも増えるかもしれません。 私個人の印象としては、日本ではADHDをはじめ発達障害がネガティブに捉えられがちのため、診断を受けることを躊躇する人が多いと感じます。ADHDの治療薬も本当に必要な人に処方されるように薬事法で定められています。今の時点で症状を偽ってADHDの診断を受けている人は多くないと思っております。 しかし今後アメリカと同じような問題が起こることも十分に考えられます。本当に苦労しているADHDの方のことを考えると偽りのADHDは増えてほしくないと願うところです。 ADHDについて気になる方は↓ ゲームで改善!ADHD治療アプリ ADHDと処理速度 🍀発達障害・トラウマ専門カウンセリング🍀 ADHD向け認知行動療法、大学生向けサポートなど 発達障害の特性に詳しいカウンセラーが対応します オンラインでも対応しています お気軽にお問い合わせください🌸 ハピネス発達心理相談室 https://www.hapi-soudan.com/ 【参考文献】 日暮嘉子(2017)「アメリカの大学における障碍者の実態と外国語クラスにおける学習障害者への支援について」日本語教育実践研究第4号 pp.52-70 Joseph Sadek,(2022)「Malingering and Stimulant Medications Abuse, Misuse and Diversion」Brain Sciences, 2022 Jul 28;12(8):1004. 文部科学省「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第三次まとめ)について」 https://www.mext.go.jp/content/20240321-mxt_gakushi01-000034752_2_1.pdf (20241206参照) 日本学生支援機構「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」 https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_shogai_syugaku/index.html (20241209参照)












